「完全に父の影響でVIPが好きになりました。31、32、33とシーマを乗り継ぎ、最後に34に乗っていました。今はセダンを降りていますが(笑)」。
そう笑って話してくれたこのY34グロリアのオーナー、渡辺クン。まだ23歳でVIP歴は5年。今回の愛車は彼にとって2台目のY34であり、記念すべき最初の所有車が、冒頭で語ってくれた父親から譲り受けた車輌だった。しかし、自らも積極的にY34を愛でた結果、気づいたのは、「直列6気筒のRBエンジンを積んだY34が欲しい!」という思いだった。
Y34と言えば、すでに当時の日産車の主力車に搭載されてきたV型6気筒のVQエンジンが一般的だったが、R31からR34スカイラインに継承されてきた直列6気筒のRBがY34の4WD車だけに搭載されていたのだ。しかも渡辺クンが欲しかったのはサンルーフ付き。ベース車輌探しに苦労したのは言うまでもないが、やはりその情熱に勝るものは無い。ようやくこのベース車輌を見つけ出し、そこからは少しずつ自分好みの仕様に変更していったのだ。
その変更過程においても、彼らしい独特の感性がマニュアルミッションへの載せ替えだった。
「マニュアル車のセダンってかっこいいじゃないですか! ずっとそれに憧れていたんです!」。
しかし、憧れだけで簡単に完成する作業ではない。やはりミッションを探す作業と載せ替えのための資金の確保。それらの高いハードルをクリアし、晴れて理想とする最高のY34グロリアを完成させたのだ。
撮影中、何度も愛車を眺めては、「このクルマ、本当にかっこいいなぁ(笑)」と笑顔を見せていた渡辺クン。心の底から自らの愛車に対して自画自賛できる理由。それはやはり、愛車に対する愛情の深さ、でしかないのだと思う。
直6RBエンジン、5速MT載せ替え、FR化を実現していることもあり、基本コンセプトは正真正銘のスポーツVIP。その雰囲気を演出するために重要だったのは、VIP感とスポーティ感を融合させたエアロ選びだった。Kブレイク製コンプリートは正に渡辺クンが理想とするデザインだったそうで、そのスタイルを重視するため3点全て無加工で装着。赤いセンターキャップが印象的なBBS LM18インチは、F1で年間優勝を果たした際に発売される特別色を施したチャンピオンエディション。限定品のため非常に人気が高い。マフラーは直6RBらしく高回転まで図太く美しく鳴り響くよう製作した、キャンドゥジャパンのワンオフ品。5速MTとの相性もバッチリで、どこまでも走り続けたくなるサウンドだ。
ミッションは33スカイラインGTSタイプM用を流用。プロペラシャフトやミッションメンバーを変更し、さらにサイドブレーキはノーマルのフットから手引きへと仕様変更済み。ベース車が4WDのため「サンルーフ付きを探すのが大変だった」そうだ。リアテールはセドリック後期へと変更。また、4WDでは理想の低さを追求できないため、FR化も実現することで、走りと低さを両立させた。ベース車の内装はモケット仕様だったが、前愛車より本革仕様を移植。ところが4WD車ではシートベースのヒンジが合わなかったそうで、前2脚に関しては4WDで本革を装着していた物を苦労して見つけ出した。車輌全体から漂ってくる清潔感も好印象。美しさを永遠に保つために雨天未使用と「乗ったら洗車!」を徹底しているとのこと。
<OWNER>
群馬県
渡辺聖人 (23)
奥様の美玲サン、愛犬リマちゃんと共に取材にやってきた渡辺クン。奥様もVIP乗り。
◉VIPスタイル編集部
初出:2021年8月号