最近ではあまり見かけなくなったG50プレジデント。90年代生まれのセダンらしく角張り感が強く、長く、そして大きい。新しいクルマも決して悪くはないのだが、車高を落とした時の威圧感・重厚感はこの年代のセダンならでは。
そのプレジに12年も乗り続けている小林クン。兵庫県のオーナーとしては、そろそろベテランの域。周りはどんどんドレスアップを卒業している中で、彼だけは1台のクルマでコツコツと進化を続けている。
「なぜここまで続けられたかと言ったら、やっぱり地元の仲間がいたからでしょうね。特にアスピレーションやクラブフィフティのみんな。降りてしまった人も多いですが、今でも付き合いは続いていますよ」。
VIP歴が長くなるにつれ、年下の後輩も増えた。経験豊富な小林クンを慕うオーナーも多い。
「同じ車種に乗っている子はいないので、ライバルではなく良き仲間として楽しんでいます。年が上なので引っ張っていきたい、先を行きたいという気持ちは強いですが、イジられることも多々あります(笑)」。
12年かけてシンプル仕様へと辿り着いたプレジは、19歳で購入。当時は20セルシオや33シーマ全盛期。どちらかに乗ろうと思っていたが、
「やるからには国産の一番いいクルマに乗りたい。でもセンチュリーは僕の中では乗せてもらうクルマだと思っていたので、日産の最高級車であるプレジをイジろうかなと」。
中期をベースにオートクチュールのエアロを組み、ホイールを交換して車高調でローダウン。この仕様で5年ほど乗っており、当時はそれ以上イジるつもりはなかったという。しかしインフィニティQ45に乗っていたクリスタルガレージ社長との出会いが、小林クンの運命を変えた。
「イベントで社長に声をかけられて、『地元でVIPのチームを始めようと思うんだけど、一緒にやらないか?』と誘われたんです。話しているうちに、本気でVIPをやろうという気持ちが出てきました。社長と出会っていなかったら、きっとここまでイジってなかったと思います」。
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クルマを通じて出会えた仲間の中でも、特に社長の存在は大きかった。そこから少しずつ自分のやりたいことをカタチにしていったのだが、初期の仕様でお察しの通り、根はシンプル好き。しかし数年前まではインパクトを重視した仕様だった。プロジェクターを移植したヘッドライトに、稀少なバラムンディマフラーを加工した8本出しなど、過激なワザにも挑戦していたのだ。
「イベントで人の足を止める何かがないとダメだと思っていて、自分なりに模索していた時期でしたね」。
紆余曲折はあったものの、現在は小林クンが本当に好きであるシンプル仕様に戻している。
「プレジに乗って10年が過ぎ、そろそろ集大成というか、自分の理想をカタチにしたかった。イベントで勝ちたい気持ちは強いので悩みましたが、やっぱり自分の好きなスタイルで勝負してみようと決めました」。
ツインプロジェクター仕様のヘッドライト、ブラックアウトしていたグリルは純正に戻した。マフラーもバラムンディ8本出しから6本出しを経て、現在はパルファムのオーバル型カッターを加工した左右出しに変更している。自分のクルマの目印的存在であるワザを封印するのは、なかなか勇気がいることである。
「これでヘッドライトを元に戻したら、普通のプレジですからね(笑)。でも、普通のクルマには見えない自信はある。実際周りからも『今の仕様の方がカッコええやん』と言われます。イベントでも賞をもらうことができた。シンプルでも評価してくださる方が多くて嬉しいです」。
以前の仕様ではインパクトを重視していたが、ボディカラーは渋いオリジナルブロンズブラック。各部はハデでも、この深みのある色でバランスを調整していた。そして現在はルノー・ルーテシアの限定色、マロンアルダンメタリックに塗り替えた。オトナっぽいビターな色合いで、落ち着きのある佇まいを実現。
「決め手は光が当たった時に、白くならないこと。色によっては外に置いた時に様々なものが映り込んでしまい、白っぽく見えるんです」。
エアロはクルマを買った時から使い続けているオートクチュール。フロントは内巻きだったリップをカーセンス風に作り替えて若干前に出し、フォグは鋭いトルネオに変更。このバンパーはかなり前に完成させたものだが、途中で1回作り直している。鼻先から下が内側に入り込んでいたのが気になり、一度バンパーを真横に切ってからストンとまっすぐ下に落ちるように繋ぎ合わせた。
「写真を撮ったらどうもクルマが軽く見える感じがして。言わなければ気付かれないことですが、妥協できなかったので加工し直しました」。
リアバンパーはトレードマークだった15マジェのナンバーポケットを撤去し、オートクチュール33シーマ用とニコイチ。ポケットを作り直し、シンプルさに磨きをかけた。
内装も以前はインパクトを重視してオレンジと黒で張り替えていたが、3年前に白×黒レザーで張り替え直した。オーディオも内装の雰囲気に合わせて製作し、トランクリッドに描かれた龍と鯉の絵で「和」を主張。その中で唯一残している小林プレジを象徴するワザが、リアシートを取っ払ってそのスペースにディスプレイした2本のスペアタイヤ。
「魅せるポイントになるし、遠くのイベントへ行く時も安心です」。
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●VIPスタイル編集部
初出:VIPスタイル2018年10月号
文=岩田 直人 写真=木下 誠