クルマ好きの父親の影響で、VIPにハマった岡見クン。
「免許を取ってからインフィニやアリストなど、トータル6台を乗り継いできました。この32グロリアは、父親が大事に乗っていたクルマなんです。実は19歳の時、父親に『VIPをイジりたい』と言ったら『この32をイジれ』と言われました。でも、イジって廃車にしそうだったので『止めておきます』と断ったんです(笑)。そういった経緯もあるので、こいつは絶対に手放せないですね」。
ゆえに、このクルマへの思いも大きく、現仕様のリメイクにかけた期間は、実に1年半にも及ぶ。
その第一歩となったのがホイール。岡見クンが選んだのは、VIPセダンではかなり稀有とも言える、パナスポーツG7の17インチだ。
「デザインにひと目惚れしちゃったんです。ただ、16インチと17インチしか設定がなくて……。エイムゲインの伊藤サンに相談したら、『18インチじゃないとカッコ良く履きこなせない』と。しかも、完全受注生産なので、下手すると半年待つと言われて。でも、どうしても履きたかったので、アドバイスを押しのけ、オーダーすることにしたんです」。
17インチを履かせるために選んだ足まわりは、VIPオーナーからの信頼も厚い326パワー。
「過去に乗っていたインフィニやアリストでも、ずっとチャクリキダンパーだったんです。落とし具合はもちろん、乗り心地や価格帯も言うことなし。何より、同じ広島県のメーカーさんなので、何かあったときに安心ですから。他の足まわりと迷う余地なんてありませんでしたね」。
最初から「やろう!」と決めていたオーバーフェンダーは、F6・R7センチにセット。
「ホイールが設定の中で一番深いF10・R11Jなんです。このサイズがきわっきわのツライチで収まるのがこの出し幅でした」。
エアロは、ライバルと被るのを避け、あえてのメーカーミックスを選択。数ある中から選んだフロントはミトスとエイムゲインのニコイチ。
「スマートラインのカタチが好きなんです。特にリップがお気に入りで、あまりに張り出したエアロだとゴテゴテした感じになりそうですが、これは程よい出っ張り具合で、32に似合うんじゃないかなって。ワンオフで一から作って個性をアピールしようとも考えたんですが、スマートラインにして正解でした」。
こだわったのはフロントだけではない。サイドとリアもフロントとのバランスを考慮し、あらゆる選択肢から可能性を探った。
そこで、サイドステップはあえてメーカー不明の社外品をチョイス。加工を前提にし、32グロリアに装着できることだけを目的に選んだ。
「取り付けられればいいかな、ぐらいで探しました。買った時は弧を描いたデザインだったんですが、シンプルな直線にしています」。
一方、リアはジャンクションプロデュースをセレクト。こちらは大幅な加工はせず、短縮のみに留めてフロント同様デザインを生かした。
「昔から、ジャンクションのどっしりとした後ろ姿が好きなんです。ストンと落ちたデザインも良いんですが、僕はジャンクションの立体的な感じが好きで。誰が見ても、『ジャンクションだ』と分かるよう、あえて手を加えませんでした」。
リアが多少シンプルな分、マフラーはデュアルの斜め出しでやんちゃ感をプラス。メリハリの効いた組み合わせでライバルと差をつける。
「リモコンで音量調節ができる排気システムを採用しています。自宅の近所やイベントの道中では静かに走りたいなって(笑)」。
そして、このグロリアを語る上で欠かせないのがボディカラー。重厚感やカタマリ感を意識し、深みのあるオリジナルシルバーに決めた。
「レクサスブルーやカープレッドとも悩んだんですが、街乗りでカッコ良く乗るには目立ち過ぎちゃうかなって。もう37歳なので、『派手』より『渋さ』を取りました。しかも、最初に乗ったインフィニがシルバーだったので、原点に帰る意味でもシルバーにしようと。平成6年式の古いクルマで、薄っぺらい印象があるので、それを払拭するため、ニッサンのコスモスシルバーに近い濃いめのシルバーにしました」。
そうして、1年半の時を経て完成した現仕様。彼の父親の魂を引き継いだ渾身の出来である。
「入院中で、まだ見せられてないんです。あまりの変貌っぷりに、『あらら〜』とか『うわ〜』とか言われそうですけど(笑)。今日も一緒に写真を撮りたかったんですけどね。今度ゆっくり見てもらおうと思います」。
●VIPスタイル編集部
初出:VIPスタイル2020年4月号
文=幸谷 亮 写真=高原 義卓